フリーランスは失業保険をもらえる?【開業のタイミングがポイント】

2020年6月2日

失業保険の受給とタイミング

会社員を辞めてこれからフリーランス(個人事業主)になろうと考えている時、可能であれば失業保険をもらいたいですよね。失業保険は、きちんと申請すれば数十万円単位のお金が受け取れますから、開業直後の収入が不安定な時期の大きな支えになってくれるはずです。

結論から言えば、フリーランスとして開業を目指す方が失業保険を受け取れるかどうかは、その人の状況により異なります。しかし、失業保険の受給に関わる条件や手続きは複雑で、自分がもらえるのかもらえないのかすぐにはわかりづらいですよね。

そこで今回は、失業保険受給の条件や受給中に働けるかどうかなど、これからフリーランスになる方のお役に立つ情報をまとめていきます!

POINT

一般的に知られている失業保険は、正式には「雇用保険の失業等給付」という名称です。今回の記事では、わかりやすいよう失業保険という表現を使用しています。

【フリーランス】失業保険を受給できる人とできない人の違い

同じように会社を退職してフリーランスになる方でも、失業保険を受給できる場合とできない場合があります。少しのタイミングの違いが失業保険の給付可否を分けることもあるので、しっかりとチェックしておきましょう。

フリーランスが失業保険を受給できない状況

  • 失業保険の受給資格決定前に開業届を提出している
  • 失業保険の受給資格決定前に会社設立やオフィスの契約など、新しい仕事の準備を始めている

失業手当の受給申請以前に個人事業主として開業届を提出していたり、事業のための準備を開始している場合は、失業保険は受給できません。

なぜなら失業保険とは、就職する意志と能力があるにも関わらず、仕事に就けない「失業状態」にある人を対象とした給付だからです。すでに開業していたり、準備を開始している方は失業状態とは見なされないので、失業保険の受給要件から外れます。

特に退職前からフリーランスになることを決めていた人は、新事業に向けた手続きのタイミングひとつで簡単に受給資格を失ってしまいますので、注意が必要です。

フリーランスが失業保険を受給できる状況

  • 開業届を提出していない
  • 新しい仕事のために明確な準備を開始していない

フリーランスになる方が失業保険を受給するには、ハローワークで失業保険の受給申請をする時点で、個人事業主として事業や準備を開始していないことがポイントです。

前職を退職したものの、企業に再就職するかフリーランスとして独立するか迷っている場合などが、この条件に当てはまります。また、開業する意志は固まっていても、まだ何も仕事や準備を始めていないという段階ならもらえる可能性があります。

そもそも失業保険とは?

失業保険は、失業した人ならだれでも受けられるわけではなく、定められた条件をすべて満たしたうえで、ハローワークで受給資格を申請することができます。

失業保険の受給条件

失業保険を受給するには、以下の3つの条件に当てはまる方に給付されます。

・積極的に就職しようとする意思がある
・いつでも就職できる能力がある
・積極的に仕事を探しているにも関わらず、現在職業についていない

ハローワーク『雇用保険の失業給付等受給資格者のしおり』

また、以下の11個の条件に1つでも当てはまる方は、給付の対象になりません。

1.病気やケガですぐに就職することができない
2.妊娠、出産、育児などですぐに就職することができない
3.親族の看護などですぐに就職することができない
4.定年などにより離職してしばらくの間休養する
5.結婚して家事に専念し、就職を希望しない
6.家事手伝いや農業、家業に専念し、就職を希望しない
7.自営業(準備を含みます)をしている※収入の有無を問わない
8.会社などの役員に就任している
9.就職(見習い、試用期間、研修期間を含み、収入の有無を問わない)している
10.学業に専念する
11.雇用予約、内定など次の就職が決まっている

ハローワーク『雇用保険の失業給付等受給資格者のしおり』

フリーランスを目指す方に注目していただきたいのは、上記の7番の条件です。ここには、準備を含む自営業を開始している方は、失業保険の給付の対象から外れることが明記されています。開業届をすでに提出している、事業に向けてオフィスなどを契約したという場合は、失業保険を受給することは難しいでしょう。

雇用保険加入していたことが大前提!

失業保険を受給するには、上記の条件を満たしたうえで、退職前2年間において雇用保険の加入期間が12か月以上あることが大前提です。

雇用保険は、正社員の場合は加入が義務付けられています。しかし、労働時間が週20時間未満のアルバイト・パート職員の場合は加入していない可能性もあるので注意しましょう。また、前職を1年未満の短期間で退職している方は、雇用保険の加入期間が足りないために受給できない可能性があります。

失業保険はいくらもらえる?

失業保険で受給できる最大金額は、基本手当の日額×所定給付日数で計算できます。

基本手当の日額とは、失業状態にある日1日ごとに支給される手当の額です。離職前の6か月で支払われた賃金額や、離職時の年齢などを基準として定められるもので、人によって基本手当の日額は異なります。

所定給付日数とは、基本手当を受け取ることが可能な日数の上限です。離職時の年齢や雇用保険の被保険者だった期間、離職理由、障害の有無などによって90日~360日まで人によって異なります。

失業保険の受給手続き

失業保険の受給手続きは、必要な書類を揃えたうえで、ハローワークの窓口で行います。必要な持ち物は以下の通りです。

持ち物

・雇用保険被保険者離職票
・個人番号がわかる書類(マイナンバーカード、通知カードなど)
・本人確認ができる書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
・顔写真2枚(縦3.0cm×横2.5cm)
・印鑑
・本人名義の預金通帳またはキャッシュカード

失業保険をもらいながら働ける?

失業保険の受給が決定した場合でも、家でダラダラと時間を消費するのはもったいないと考える方も多いでしょう。そこで次に、失業保険を受給しながらアルバイトや業務委託などで働くことができるのかについて考えていきたいと思います。

待機期間中

ハローワークで失業保険の給付が決定すると、その日から7日間の待期期間が設けられます。この期間は失業状態でなくてはならないため、基本的に一切働くことはできません。仮にこの期間に働くと、そのぶん待期期間が延びて、基本手当の受給開始が遅れてしまいます。

給付制限期間中

前職を自己都合により退職した場合は、待期期間の満了後さらに3か月間の給付制限が課されます。

この間は、1週間の労働時間が20時間未満の限られた制限の中で働くことが可能です。週20時間を超えて就労した場合、就職したとみなされて失業保険の対象から外れてしまいます。

また、就労した日や時間数はきちんと記録し、失業認定の日に申告する必要があります。虚偽の申告をすると不正受給として処罰されますので、正直に申請しましょう。

基本手当受給中

基本手当受給中の労働は、「就職または就労」、「内職または手伝い」の2種類に区分されます。

「就職または就労」とは、1日の労働時間が4時間以上になった日を指します。「就職または就労」を行った日は、基本手当の支給の対象となりません。ただし、給付日数が減るわけではなく、給付が先送りになるということです。

失業保険の給付は、離職日の翌日から1年間に限定されていますので、給付を先送りにしすぎて1年が経過してしまうとその分の給付を受け取ることはできなくなります。また、1週間の労働時間が20時間以上かつ就労日が4日以上ある場合も、就職したとみなされて失業保険は給付できなくなります。

「内職または手伝い」とは、1日の労働時間が4時間未満の日を指します。この場合、収入額によっては、基本手当が減額されたり、支給されなくなったりするリスクがあります。

1日4時間以下の労働をした際の基本手当の支給は以下のように制限されます。

A:基本手当日額+収入日額-控除額
B:前職での賃金日額 × 0.8

AがBよりも少ないまたは同額の場合:全支給
AがBよりも多い場合:減額支給
1日の収入が基本手当より多い場合:不支給

失業保険の受給中は、求職活動と認定を忘れずに!

実は失業保険を受給している間は、ただ給付を待っているだけではいけません。きちんと給付を受けるためには、決められた回数の求職活動やハローワークでの失業認定をクリアする必要があります。

フリーランスになるからといって求職活動が免除されるわけではありませんから、開業の準備と並行して求職活動と失業認定のスケジュールも忘れないようにチェックしましょう。

不正受給は絶対にダメ!

失業保険は、数十万円単位のお金を受け取れるありがたい制度ですが、その分給付には複雑かつ厳しい制限があります。そこで、どうしてもお金が必要な場合など、つい虚偽の申告をして不正に受給したいと考える方もいるかもしれません。

しかし、失業保険の不正受給は絶対にやめましょう。不正受給が判明すると、受給した金額の返還に加え、受給金額と同額から2倍に相当する罰金が科され、詐欺罪などで処罰されることもあります。

自分ではうまくごまかしたつもりでも、確定申告などを通して不正受給はばれます。また、自分では不正受給のつもりがなくても、不正確な内容の申告をしたり、申告すべき事項を申告しなかったりしても不正受給に当たることがありますので注意しましょう。

フリーランスなら、再就職手当の申請がおすすめ!

ここまで、失業保険を受給する方法を解説してきましたが、これからフリーランスになろうとしている方にとっては「少し制限が多いかも…」と思いませんか?また、フリーランスになろうとしているのに、何度も求職活動をするのは面倒ですよね。

そこで、失業保険の受給資格を持っていて、フリーランスになろうと考えている方は、「再就職手当」を申請するのがおすすめです。再就職手当は、所定給付日数を残して早期に再就職した方に向けて、給付金額の60~70%を受給できる制度です。

失業保険を満額受け取るより給付額は少なくなりますが、労働の制限や不要な求職活動する手間が省けます。

再就職手当の受給方法について詳しく知りたい方はこちら!↓

2020年6月2日ライフハックフリーランス,失業保険,開業

Posted by YUKI