月収1万円以下でも個人事業主として再就職手当を受給できた話

再就職手当の手続き

失業期間中に、条件を満たして再就職すると給付される「再就職手当」。企業に再就職される方は比較的申請が簡単ですが、個人事業主(フリーランス)として開業する場合は、手続きが複雑になりがちです。けれど結論をいえば、個人事業主でも再就職手当を受給することは可能です!

実は筆者もフリーランスとして開業を決めた当時、ライターとしての収入は月収1万円以下でした…(ほぼ何も実績がない初心者状態)。それでも、条件を必死に調べて書類をそろえ、申請したところ約30万円の再就職手当を受給できました。

しかし、複雑な受給条件を調べるのはとても大変でしたし、当時は本当に給付を受けられるのか不安だらけでした。そこで今回は、これから開業して再就職手当を受給したい方のために、筆者の実際の体験をもとに再就職手当の受給の流れをご紹介します。

目次

再就職手当とは?

再就職手当とは、雇用保険の失業等給付(基本手当)の受給資格を持っている方が、所定給付日数を残して早めに再就職した場合に、残りの給付金額の60%または70%を受給できる制度です。

個人事業主として開業する場合は、そもそも雇用保険の受給条件である「失業状態」に当てはまらないので、多くの場合は基本手当をそのまま受給するのではなく、再就職手当を申請することになるでしょう。

もちろん、所定給付日数をすべて消費するのを待って開業するという方法もありますが、基本手当の受給期間中や、待期期間は開業して業務を始めることができず、何か月も時間をロスしてしまいます。また、基本手当を受給しながらこっそり開業したり本格的に働いていたりすると「不正受給」に当たりますので、注意してください。

所定給付日数とは?

失業状態にある日1日ごとに支給される「基本手当」を受けることができる上限の日数。離職理由や年齢、被保険者として働いていた期間の長さによって決められる。

再就職手当の支給額

再就職手当の計算式

基本手当日額×所定給付日数の支給残日数×60%または70%
(参照:ハローワーク『再就職手当のご案内』)

再就職手当は、雇用保険の所定給付日数を多く残して再就職(開業)するほど、多めに給付される仕組みです。所定給付日数が3分の1以上残っていれば60%、3分の2以上残っていれば70%が給付されます。

筆者の場合は、所定給付日数が90日、3分の2以上残っていたために70%分支給され、合計約30万円ほど受給することができました!

再就職手当を受給する条件

再就職手当を受給するには、次の8つの条件をすべて満たす必要があります。

1.就業日(開業日)の前日までの失業認定を受けた後の基本手当の支給残日数が、所定給付日数の3分の1以上残っていること。

2.1年を超えて勤務することが確実であると認められること。

3.待機満了日後の就職であること。

4.離職理由による給付制限がある場合は、待機満了日後1か月間については、ハローワーク等または許可・届け出のある職業紹介事業者の紹介により就職したものであること。

5.離職前の事業主や、その関連事業主への再就職でないこと。

6.就職日前3年以内の就職について、再就職手当または常用就職支度手当の支給を受けていないこと。

7.受給資格決定(求職申し込み)前から採用が内定していた事業主に雇用されたものでないこと。

8.原則として、雇用保険の被保険者資格を満たす条件での雇用であること。

ハローワーク『雇用保険の失業給付等受給資格者のしおり』

個人事業主にとって特に大切なのは、太字にした2番の条件です。個人事業主は企業に雇用されるわけではありませんから、1年を超えて勤務することを証明するために、クライアントとの契約書や事務所の賃借契約書など、安定して個人事業主として働き続けられると納得させる書類を提出する必要があります。

条件3.4もしっかり確認しないとミスしやすいポイントです。雇用保険の受給資格が決定すると、7日間の待機期間が定められます。さらに、自己都合で退職した場合は、待機満了日後3か月間は給付制限もあるのです。

すでに開業を決意している場合、早めに開業届を提出したり、事業の準備をしたくなるかもしれませんが、7日間の待期期間中や給付制限開始後1か月が経たないうちに事業を開始すると、再就職手当の受給条件から外れてしまいます。

個人事業主が再就職手当を受給する手順

条件を確認していただけたら、ここからは実際に再就職手当を受給するための手続きの流れを見ていきましょう。

手順1.ハローワークで雇用保険の受給手続きを行う

退職したらまずはハローワークに出向き、雇用保険の受給手続きを行います。手続きに必要な持ち物は以下の通りです。受給資格が決定すると、「雇用保険の失業給付等受給資格者のしおり」を受け取り、初回講習の日時を知らされます。

持ち物

・雇用保険被保険者離職票
・個人番号がわかる書類(マイナンバーカード、通知カードなど)
・本人確認ができる書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
・顔写真2枚(縦3.0cm×横2.5cm)
・印鑑
・本人名義の預金通帳またはキャッシュカード

手順2.雇用保険説明会(初回講習)に出席する

受給資格決定日に案内された日時に初回講習に参加します。ここでは、雇用保険の受給方法や不正受給のリスクについての説明を受け、雇用保険の受給資格者証が交付されます。

手順3.税務署に開業届を提出する

初回講習を受講し、待機満了日が過ぎたら、開業届を提出して事業開始の準備を始めます。開業届を提出するタイミングを誤らないよう慎重に手続きを進めましょう。

給付制限がない場合

給付制限が課されていない場合は、待機満了日(受給資格決定から通算7日間)以降、開業の準備を進められます。待機満了日を待たずに開業してしまうと、再就職手当を受給できませんのでご注意ください。

給付制限がある場合

自己都合退職により3か月の給付制限がある場合は、待機満了日後、さらに1か月間待つ必要があります。この1か月間の間に開業しても、再就職手当を受給できませんので焦らずに待ちましょう。

手順4.必要書類をそろえてハローワークへ

開業届の準備が整ったら、必要書類を整えてハローワークに開業した旨を伝えます。

必要書類

・雇用保険受給資格者証
・開業日の前日までの失業認定申告書
・採用証明書(個人事業主の場合は、自分で記入する)
・開業届のコピー
・1年を超えて事業を続けることを確認できる書類

筆者が苦労したのは、最後の「1年を超えて事業を続けることを確認できる書類」です。なんせ、当時の私は、わずかな業務委託をこなして月収は1万円にも満たない状態…。1年後に自分がどうなっているのかなんてまるでわかりません。

会社を設立したり、事務所をかまえたりしている方は、事務所の賃借契約書やスタッフの雇用契約書、備品の購入領収書などが使えます。初心者ライターだった私は、本当にわずかな委託業務の請求書、クライアントとのやり取りの文面をコピーしたもの、報酬が支払われたことがわかる書面など、とりあえず使えそうな書類はすべてかき集めて持っていきました。

ハローワークのスタッフの方が親切に教えてくださって、無事再就職手当を申請できることになりましたが、あまりに証拠となる書類が少なかったため、窓口では「給付の審査が通るかどうかはわからない」と言われていました。

手順5.ハローワークから再就職手当が振り込まれる

ドキドキしながら審査の結果を待つこと1か月。ハローワークから郵送で無事に再就職手当が振り込まれた旨の書類が送られてきました。他サイトでは、業務を継続しているかどうか電話確認があると書いているものもありますが、筆者の場合特に追加の確認はありませんでした。

また、実は万一書類が足りなくて審査に通らなかったとしても、書類を集めなおして、2年以内であれば再申請することができるそうです。なので、条件にある通りきちんと開業後に業務を継続していれば、再就職手当をもらえる可能性は大いにありそうですね!

まとめ

今回は、個人事業主が再就職手当を受給するための手続きについてまとめました。再就職手当は、正しく申請すれば駆け出しの個人事業主の方の大きな助けになってくれる給付金です。ぜひ複雑な手続きの際に、今回の記事を参考にしてみてください。